RTX 5080を買うならPCごと。グラボはビックリマンシールになった

1980年代、日本の小学生はチョコレートを捨てていた。

目当てはビックリマンチョコに1枚入ったシールだ。シールだけ抜いて、チョコはポイ。最盛期は月産3,300万個、年間売上120億円超。工場をフル稼働してもチョコが間に合わず、ビックリマンアイスとビックリマンスナックが緊急投入された。捨てられる食べ物を増産するために、別の捨てられる食べ物を出している。偽物のシールまで出回り、1988年にはとうとう公正取引委員会が動いた。小学生のおやつに公正取引委員会。ヒマだったの?

昔の話だと笑っていられない。40年後の今、大人が同じことをしている。33万円のグラボに7万円足すと、パソコンが1台ついてくるのだ。

そういえば、チョコを捨てていた小学生は今ちょうど50歳前後。33万円のグラボをポンと買える年頃である。まさか同じ人たちではないと思うが。

グラボの値段が3か月で12万円上がった

NVIDIAの公式ページには、RTX 5080は¥198,800からと書いてある。この数字を信じてウキウキで店に行くと、レジの前で黙ることになる。

ASUS TUF-RTX5080-O16G-GAMINGの価格推移グラフ。7月の25万円前後から10月の36万円台まで上がっている
ASUS TUF-RTX5080の1年間の値動き。出典:価格.com(2026年11月1日)

このカードの最安は7月に¥249,800、11月1日には¥366,800だ。別のカードまで店を見渡した最安でも¥332,980で、発表価格の1.67倍。NVIDIAの公式ページだけが、今も真顔で¥198,800と書いている。あのページだけ2025年に住んでいる。

背景にあるのは、グラボに載せるメモリの不足だ。調査会社のTrendForceは、GDDR7の生産が限られ、能力がほかの用途に回されていると伝えている。米国のNVIDIAストアからは、RTX 5080の表示が消えたと報じられた。発売から2年も経っていない。新車なら最初の車検も来ていない。

7万円足すと何がついてくるのか

ここでドスパラのPCを見てみる。

ドスパラのGALLERIA XGR7M-R58-GDの商品ページ。RTX 5080 16GB、Ryzen 7 5700X、送料込み402,180円
GALLERIA XGR7M-R58-GD。出典:ドスパラ(2026年11月1日)

RTX 5080が載って、送料込み¥402,180。単体の最安との差は¥69,200だ。この¥69,200でついてくる部品を、新品の最安で見積もってみた。

ついてくる部品新品の最安
CPU(Ryzen 7 5700X)¥34,680
SSD(500GB)¥17,327
Windows 11 Home¥15,800
電源(850W)¥9,980
メモリ(DDR4 16GB)¥8,908
マザーボード¥5,380
ケース¥2,607
CPUクーラー¥1,088
合計¥95,770

¥69,200の追加で、¥95,770分の部品がついてくる。グラボは実質¥306,410になり、単体より¥26,570安い。おまけの値段が、おまけの中身より安いのだ。しかもこのモデル、よく見るとマインクラフトまで同梱されている。もう1枚シールを入れるな。

PCの値札は別の時計で動いている

なぜこんなことが起きるのか。同じシリーズのPCを並べると、答えが見えてくる。

RTX 5070 Ti搭載のXGR7M-R57T-WLは¥368,280。RTX 5080搭載機との差は¥33,900だ。単体だと差は¥93,180あるので、PCにした瞬間に約6万円が蒸発している。発表時の価格差でさえ¥50,000あった。おかげで実質グラボ価格が単体より安いPCの割合は、RTX 5080が23.5%、RTX 5070 Tiが0.9%。隣のグラボなのに26倍違う。NVIDIAから見れば、完全に子ガチャである。

店頭のグラボの値札は毎日書き換わる。一方でBTO PCの値段は、グラボごとに階段状に並んだラインアップの一段だ。1段だけ急に12万円上げたら、階段が壊れる。しかもBTOメーカーはカードをまとめて仕入れるので、前の値段が残りやすい。

つまりPCの値札には、少し前の世界の値段が残っている。単体を買う人だけが、律儀に今日の相場を払っているわけだ。

熱狂はいつか終わる

ビックリマンの熱狂は、1988年の公取委の指導で形を変えた。ロッテはシールの価格差をなくし、種類ごとの混入率をそろえた。レアがなくなれば、祭りは続かない。

PCも同じで、値札の時計はいつか追いつく。在庫が入れ替われば、階段は作り直されるはずだ。古い値札が残っているうちが花である。

ロッテは「お菓子を食べてください」と頼んだ

当時ロッテは「ビックリマン憲章」を作った。シールを売り買いしない、お菓子は全部食べる、交換で仲良くなる、の3項目だ。お菓子メーカーが「お菓子を食べてください」と憲章で頼んでいる。こんなに悲しい憲章があるだろうか。

安心してほしい。今回のチョコは捨てなくていい。電源を入れればWindowsが立ち上がる、普通のパソコンだ。憲章に従って完食してほしい。

注記

・価格:2026年11月1日に確認した送料込みの税込価格
・単体の最安¥332,980:当サイトが確認した在庫のある新品の最安で、PCに載っているカードとはメーカーや冷却方式が異なります。
・マザーボード、電源、ケース、CPUクーラー:同じ規格の安いもので推定しました。
・実質グラボ価格が単体より安いPC:RTX 5080のページ
・計算の詳細:計算方法